乱華Ⅰ【完】
fifteenth
朝学校に行く準備をしてコーヒーを飲んでいたら、最近のお決まりになりつつある携帯が鳴った。
ディスプレイにはいつもの名前。
それを暫し見つめて通話ボタンを押す。
「なに」
「着いたから早く降りてこい」
要件だけを言ってすぐさま切れた携帯。
受話器からはツーツーと虚しい電子音が鳴るだけ。
なんなんだ、とイライラとしながらも、下に降りればいつもの黒塗り。
その後部座席には見えないけれど奴がいる。
つかつかと歩み寄り乱暴にドアを開けて、
「…あれ、颯人と正宗は?」
真っ先に浮かんだ疑問。
いつもの助手席に正宗はいないし、後部座席に颯人の姿もなかった。
「あ?今日はいねぇよ」
「タクに聞いてない」
私は梶さんに聞いたんだよ!
だけど梶さんは苦笑いを漏らすだけで何も言わなかった。
いつもより広めの後部座席に乗り込めば静かに動き出す車。
空気と化した梶さんと私とタクしかいない車内は、昨日の帰り際些細な口喧嘩をしたせいで、学校に着くまで険悪な空気だった。
…使えないハゲめ。
私の怒りは八つ当たりで梶さんにまで飛び火していた。