乱華Ⅰ【完】
逃げようにも逃げ道は絶たれた。
この四面楚歌をどう乗り切るか…
再び拳に力を込めるけど…
ドンッ
「かはっ…」
鈍い音と共に一瞬息が止まる。
ガタイのいい男の容赦ない拳が私の腹部を圧迫したかと思えば、手を後ろに拘束され倉庫のドアに押し付けられ、そのままハニーブラウンの髪の毛を鷲掴みにされた。
力加減なんてないから髪の毛がブチブチと抜ける音が無情にも聞こえる。
「乱華のお姫様だからって調子こいてんじゃねーぞ」
「…調子…こいて、なんか…ない」
うまく酸素が取り込めないから途切れ途切れに、だけど今できる精一杯の抵抗を口から出す。
耳元で喋られて気持ち悪い。
微妙に男の口が耳にあたって鳥肌が立った。
「おい、ナイフ貸せ」
私を拘束したまま後ろを振り返って、ナイフを持っていた金髪男からナイフをぶん取り再び私に突きつけた。
…今度は背中に。