乱華Ⅰ【完】
けたたましい音がして閉じてた瞼をゆっくりと開く。
目の前の男も音のした方向を向いていて…
「…は、やと…?」
扉を蹴破ったのか土埃が舞う中、うっすらと確認できたのは黒髪に金メッシュ。
射る様な瞳は私ではなく目の前の男に向けられていた。
私の声に反応したのか颯人が私に視線を移す。その刃物の様な視線が驚きと怒りに塗り替えられたのを今の私は気づけなかった。
「…何してんだ」
恐ろしく低い声でまるで地を這うハイエナの様な視線を男に向けた颯人。
「はっ!いや、俺は何も…こっこいつら!!こいつらに…」
男は仲間の2人を指差ししどろもどろになりながらも言葉を発する。だけど…
「さっさと退けよ」
目にも止まらぬ早さで回し蹴りを繰り出した颯人によって、男が私の目の前から消えた。
あろう事かガタイのいい男はそのまま横にふっ飛び、倉庫に置いてあった得点板に頭から突っ込んだ。
「おもしろそーなもん持ってんな?」
「ヒッ…」
ゆらり颯人はそのままビデオカメラを回してた茶坊主の男に向き直り、答えを聞く前に男の顔面を殴り側頭部を蹴る。
そのはずみで手から落ちたビデオカメラが音を立てて床に落ちた。
それを無表情で踏み付ける颯人。
メキメキと颯人の圧力で元の形を成していないそれはもう使い物にならないだろう。
「うっうわぁぁぁぁ!」
「は、颯人!」
颯人と視線が合わさったナイフを持った金髪男が途端に奇声を発しながら颯人に向かう。
だけど颯人はそれを軽やかや除けて男の首の後ろを手刀で突いた。