乱華Ⅰ【完】
それは誰が見ても圧倒的な強さだった。
「誰の命令だ?」
得点板に突っ込んだ男の前に屈んだ颯人は髪の毛を掴み頭をあげさせて問う。
「…れっれ、れ、麗奈…」
「…あ?」
「しらっ…白河っ!白河麗奈っ!ここの三年のっ…」
そこまで聞いた颯人は立ち上がって男の顔面を思いっきり蹴る。
何かが折れた鈍い音と、その反動で血が四方に飛び散ったのがわかった。
「……大丈夫か」
シンと静まった倉庫内に颯人の声が響く。呆然とその行動を見ていた私にゆっくり歩み寄ってきて、自分の着ていた黒のジャケットを私に掛けてくれた。
そこで私は漸く今起こった事態に頭がついてきて…
自分が無事だったんだ、颯人に助けられたんだってわかって…
「だい、じょぶ…じゃない……こわ…恐かっ…た…」
目頭から涙が止めどなく溢れてきて、縋る様に颯人の胸に飛び込んだ。