乱華Ⅰ【完】
結局注文されたままに飯を作ってやるあたり俺も甘いな。
奥の部屋に飯を運びに行けば、
「で、タクはどこに行ったのかねぇ〜」
「さぁ、ね。ここにいると思ったんだけど」
「タク、荒れてないといいけど…」
「それは無理でしょーよ。口には出さなかったけどアイツ相当ヤられてたじゃねぇの。流石に酷かったわ」
障子の向こうから聞こえる三人の話し声。時折修がカチカチとジッポをいじる音だけは軽快なものの話の内容は重い。
「…ところで和真さん、入らないんですか?」
「…気付いてたのか」
「…匂いがしますからね」
障子の前で盗み聞きしていた俺に奥から正宗の冷えた声がが降りかかる。
本当隙がねぇよこの男は。
障子を開ければ正宗はニヤリ、シニカルな笑みを携えてこちらを見ていた。
「和真さーん盗み聞きなんてエロ〜い」
…なんて言いながら俺の持ってきた飯を取り上げる修。
本っ当に可愛げのない奴等。
修と正宗を見て苦笑いがこぼれる。
この中で唯一まだ可愛げがある司は、残りの注文した飯をテーブルに置いていれば、途端に息を吹き返した様にキラキラした瞳を見せてきた。