乱華Ⅰ【完】
いつもの繁華街から大分離れたそこは、見慣れない場所だった。
もちろんここら辺の地理に詳しいわけじゃないから、ここがどこかなんてわからない。
ただ、周りの状況からしてこれが決して“良い状態”じゃないってのはすごくわかった。
人気のない裏路地。
そこにひっそりと佇む3階建ての建物。
…そして建物の周りには異常な程のバイク。それも普通のバイクじゃなくて、改造されたものばかり。
一歩足を踏み込めば夕方ってのを覗いてもかなり薄暗い室内。
湿気が強いのか陰気くさい雰囲気を放っていて、冷んやりとした空気が肌に突き刺さる。
1階には割れたガラスや粉々になったビンや缶。
…そして横たわる数人の男。
こんなところにタクがいるなんてちょっと信じられないけれど、上から聞こえてくるのは紛れもなく聞き覚えのある声で…
梶さんは横たわる奴らに冷ややかな視線を送り、無言のまま部屋の端にあった階段へと向かいこちらへと振り返る。
その瞳は「本当にこの先に行くのか?」と問うていて、それにコクリ頷き梶さんの後に続いて2階へと続く階段を上った。