乱華Ⅰ【完】
こんな時に、一瞬あの無理矢理抑え込まれた事を思い出して反応した自分が嫌になったけど、今はそんな事よりも大事な事がある。
「…タクいるんでしょ。瞬そこどいて」
「ダメっスよ」
瞬は私に触れようとはせず頭をふるふると横に振る。
「…瞬」
「危ないんですよ?わかってます?」
「…わかってる」
本当は瞬が何が危ないって言ってるかなんてわかっていなかった。
ただタクが中にいてタクを連れて帰るって事だけが私の頭の中にはあって。
攻防を繰り広げる私と瞬の間に割って入ってきたのは
「行かせてやれ」
いつもの比じゃない低い声を出した梶さん。
助け舟を出すかのように瞬の肩を叩いた。
「でも…」
「いいから。俺が責任とる」
「…」
瞬の表情は硬いものだったけどもう何も言わなくて、私は心の中で梶さんに感謝しながら乱華メンバーからの視線を浴びながら、ドアノブを回した。