乱華Ⅰ【完】
コイツ一体何者?
聞きたいことはたくさんあった。
なんで知ってるのか、とかどこまで知ってるのか、とか今の現状をアイツは知ってるのか、とか。
ごちゃごちゃの頭の中。
考えることが多すぎて追いつかない。
だけどわかる事が一つだけある。
コイツは何か勘違いしてる。
私が探し出されるなんてアリエナイ。
誰も私なんか探してない…でしょ?
「おい河野。お前らなんでコイツに執着してんだよ?」
自嘲的な笑みが僅かに洩れたと同時、当てのない独白に痺れを切らしたのか、タクが一歩前に踏み出して男もとい河野に問いかけた。
「さぁね。…っとお喋りタイムはお終い」
タクが前に踏み出した事により視界が開けた私は、河野と呼ばれた男がニヤリ笑ったのが見えた。
その瞬間ドアから入って来た1人の男に私は目を見開く。
…その瞬間にやっと、瞬の言った“危ない”の意味がわかる私はかなりのバカ。
その人物はそのまま颯人目掛けて殴りかかっていて
それを軽く躱した颯人は舌打ちしながら2人から距離を取った。
それとほぼ同時、河野は囲まれていた場所からクルリと身を翻し、男の隣に肩を並べた。
…河野の隣にいる男。
それはいつか正宗から見せてもらった写真の、目の冷めるような、むしろ白に近い金髪。
それは間違いなく陽炎の総長、本間省吾だった。