乱華Ⅰ【完】
ピリピリとした空気。
対峙し合う颯人達と本間省吾達はまさに一色触発。
私はまだ部屋の奥の窓際でタクの背中に守られていた。
本間省吾は威圧的な態度で妖しい雰囲気を纏っていて、口元を歪めている。
はっきりいって何を考えているのか予想がつかない表情だった。
そんな本間省吾の視線が流れるように私に向き
「こっちに来い」
有無を言わせぬ低い声で言葉を落とした。
たったそれだけ。
そのたった一言だけなのに私の足は竦み、その鋭い瞳から目を逸らせなくなった。
怖いと思ったんだろうか。
真っ直ぐに私を射抜くその瞳は底なし沼のように暗くて、どこか狂気を感じる。
その瞳からは感情をうまく読み取れない。
何を考えて、私を呼ぶのか。
正宗の言うとおりに喧嘩を売ったことに対して怒っている…ってワケじゃなさそうだ。
…だって河野の言った事を考えれば、そうじゃないと私には解る。
「…ふざけんな」
「あ?」
タクの後ろで固まりながらも、頭の中ではいろんな事を考えていた私の代わりに言葉を発したのは、苛立った様子の颯人だった。