乱華Ⅰ【完】
「…正宗、」
「ん?何かな心ちゃん」
「本当にごめん。……それと…梶さん、を怒るのはやめて…ね?」
「うーん。それはどうかな?ね?梶。お前が余計な事するからヤり損なったし」
「…すいません」
言いながら正宗は恐ろしい笑顔を梶さんに向けていた。
笑顔なところが逆に怖いし、正宗らしい。
ヤり損なったって言うのは、十中八九陽炎のことなんだろうけど。
そして余計な事ってのは間違いなく私をあの場に連れて行った事で
「…本当、私が無理矢理来た、から。
梶さんは悪くない。怒るなら私に怒って」
いや、マジで。
梶さんは確かに止めた。ついでに言うなら瞬も私を止めていた。
それを無視してでもタクに会いたかったってのは私のワガママ。
そのワガママで周りに迷惑がかかってる。
「…それでも、それを止めるのもコイツの仕事だからね?」
「…」
前を向いたままの正宗の表情はわからなかったけど、いい聞かせる様な口調の正宗。
…どうしよう。
責任取るなんて言ってコレじゃぁダメじゃん自分。
本当、バカだ私は。
何やってんだろう。梶さんが怒られるのは違う。そんなの望んでない。
悔しくて無言で服の裾を握り締めると同時に、だんだんと下がる視線。
「噛むな」