乱華Ⅰ【完】
「…まぁ、俺が言えた義理じゃねーけどさ、今回は俺のせいってのもあるわけだからコイツいじめるのやめてやって」
不意に左から聞こえたタクの声に、意識が引き戻される。
…もう本当に、考えるのはやめよう。
思考がその事に左右されていることでさえ嫌だ。
期待しない。望まない。
頭を軽く振って思考を切り替える。
「…本当にね。それに人聞きの悪い事言わないでくれない?俺は心ちゃんをいじめてないし、梶を後でこっそりコキ使おうなんて考えてないからね?」
「…え」
正宗の言葉にビクリ、肩を震わせる梶さん。
いやいや、正宗そこは思ってても口に出さないでよ。
梶さんまた青くなってるじゃん。
それともわざとなの?
ニコニコ笑って梶さんの反応を見てる所を見ると後者な気しかしない。
タクは「梶頑張れよ」ってケラケラ笑って他人事だし。
颯人もいつの間にかタバコ吸ってるし、我関せずって感じに窓の外見てないで梶さん助けてあげてよ!
私じゃ正宗には口で勝てないんだから!!
結局正宗の「…冗談だよ」っていう言葉で梶さんはハーと安堵の溜息を吐いていた。
でも私は正宗の間がやたらと気になったけど言わないでおいた。