乱華Ⅰ【完】
「あの場所でいいんですか?」
前から聞こえた声に「そ〜だよ」いつの間にか隣に座っていた茶髪が答える。
いつからいたんだよ!!
気配を出せ、気配を!!
そう思っても口に出せないのは、うん。
悲しいかな、ビビってたんだよ。
私は混乱しつつもその声の主…運転席の人物を見てしまった。
これが悪かったんだと思う。
うん。
そーに違いない。
スキンヘッドのやけにがたいのいい男。
その首から少し見えるのは龍の刺青。
首にしてある鎖のようなネックレスは金色。
「イテっおい、やめろ!何暴れてんだよ!!」
オレンジ頭の声が車内の中で響く。
私は思いっきり暴れた。
この狭い車内で渾身の力を込めてオレンジ頭の顔を引っ掻いて、茶髪を思い切り突き飛ばして。
何が何だかわからなかったけど、ただこのまま大人しくしているわけが、ない。
今やらなきゃ殺られるかもしれないしマワされるかもしれない。
オレンジ頭を押しのけて鍵の掛ったドアに手を伸ばした。
ドアに手が届いた瞬間…
私の意識はそこで途切れた。