乱華Ⅰ【完】
少し気が抜けてソファーに深く腰掛ける。
狙われるとか、やっぱり現実味がないけど、今は彼らの言うとおりにしようと思う。
無駄な危害は加えられたくないし。
無駄な騒ぎは御免だ。
お礼の言葉を述べて、すっかりぬるくなったオレンジジュースを飲みながら、何かを忘れている様な気になった。
なんだった?
うーんと悩んでいると、ピリリリリと携帯の着信音が鳴りだす。
それは正宗のものらしくて、彼は携帯片手に退室して行った。
結局、ここは何なんだろうか。
視線をぐるりと回して、観察してみる。
正宗が出て行ったドアの近くに古びた本棚があって、その向かいに冷蔵庫。
私達が座る2つの黒いソファーとその間にあるガラステーブル。
司が座るソファーの後ろにはデスクがあって、そこには総長らしい颯人が座っている。
私の右前には大きな液晶TV。
あ、正宗が出て行った対角線にもう一つドアがある。
「何キョロキョロしてんだ不審者」
あまりにキョロキョロしすぎたのか頭をガシリと鷲掴みされた私はその手の主、タクを見上げる。
左隣にいたハズの修は気付けば正宗と同じドアへと歩いていた。