乱華Ⅰ【完】
「…おい、心ちょっと来い」
突然立ち上がったタクは私の腕を引っ掴み、無理矢理その場に立たせ、そのまま手を引き正宗達が出て行ったドアへと向かう。
「…ちょっ…タク!?」
意味がわからなくて後ろを振り返れば、私達と颯人を交互に見比べて吃驚した顔をした司と、携帯で誰かと話し出した颯人が見えて、パタン―ドアは閉められた。
瞬間、ブワッと吹いた風に「…寒っ」思わず眉間に皺が寄ってしまう。
「ここは港の近くにある倉庫だ」
どうやら私達が今までいたのは2階らしくて、柵に寄りかかるタクは左の方を向いていた。
そこは海。
海に反射した太陽はオレンジ色になっていて、今が夕方だという事を示している。
つうか、私はどんだけ寝てたわけ?
そこで漸く学校の事を思い出した。
「ねっ…ねぇ!学校は?」
「んだよ。質問ばっかうぜぇな」
「学校!大丈夫なの!?」
「大丈夫だろ。問題ねぇよ」
心底面倒くさそうに答えたタクは頭をガシガシと掻いている。
向かいには平屋の建物があって、私達がいる建物と向かい合うようにある。
上には大きな屋根があって、その下には何台ものバイクが止まっていた。