乱華Ⅰ【完】
エントランスを抜ければ、マンションの真横に横付けされた黒塗りの車。
朝というものが全くもって不釣り合いな車は、昨日もお世話になったもの。
恐る恐るその車に近づけば、不意に開いたドア。
「早く乗れや」
さっきも聞いた不機嫌な声はタクのもので、何故こんなにもふてぶてしい態度を取られなければならないのかと、不快に思いながらも、その車に乗りこむ。
バンッとドアを勢いよく閉められた車はゆっくりと発進する。
私は小さく息を吐き出しながら、その高級そうなシートに浅く持たれ掛けた。
「おはよ」
助手席からコチラを振り返ったのはエセスマイル正宗。
「…」
無言でジっと見れば、苦笑いを浮かべる正宗。
てか、制服同じじゃんか…
学校一緒だったんだ…とか考えていた私の隣に、ドッシリと座るタクにいきなり頭を小突かれた。
「痛ぇな!!」
いきなり叩かれる意味がわからない。
ギッと左に座るタクを睨みあげれば「眠ぃんだから喚くな」と理不尽な事を言われた。