乱華Ⅰ【完】
「はぁっ…」
「おい、待てや!」
誰が待つかよっ!!
チラリと振り返ればすごい形相で追いかけてくるのは赤髪。
ヤバい酒が回るっ…
ふらふらになりながらも走る私よりも明らかに足の速い赤髪。
どこかに隠れないと、撒けないっ!
「ぶっ…」
真っ直ぐ走っていた路地を咄嗟に右に曲がれば、誰かにぶつかった。
一瞬鼻を掠めたのは、柑橘系の甘い匂い。
もしかしたら助けてくれるかも知れないっ!
そう思って上げた顔。
一瞬にして淡い期待は打ち破られた。
「…なんだお前」
明らかにヤバい人種。
絶対にあの赤髪の仲間と思われる。
オレンジ色の、髪。
眉間に皺を寄せて私を見る瞳はかなり鋭い。
怪訝な顔で私を見るソイツ。
目だけで人が殺せるんじゃなかろうか…?
それくらい目つきが悪い。
「おいっ!テメェ逃げてんじゃ………安芸っ!?と……城戸!?」
私の背後には赤髪。
目の前には赤髪の仲間。
…どうしようっ。
破られた服をぎゅっと握る。