乱華Ⅰ【完】
校舎にはもう人がいなくて、閑散とした廊下を3人で歩く。
そういえば結局修は来たんだろうか?とか正宗はあの後どこに行ったんだろうか?とか考えていて、ふと思った事を口にした。
「司もこの学校なの?」
「見たらわかんだろ」
振り返り問い掛けた私に、司はぶっきらぼうに呟く。
見たらわかんだろって言うけど、司は制服なんて着ていない。
ライトブルーの薄手のニットに黒のライダースを羽織った格好をしていて、どこからどう見ても制服を身に纏ってはいない。
「…制服着てない、よね?」
ポツリ呟いた私に、鋭い視線を向けた司はなんだか怒った様子で「ズボン!ズボン履いてんだろーがっ!!」言ってドスドスと廊下を踏み歩いて、行ってしまった。
「…あいつ制服、嫌いなんだとよ」
ポカンと司の後ろ姿を見ていた私に、タクがやれやれと言った感じで、言葉を投げかける。
…なんで私が聞き分けの悪い子供を叱る親の様な顔を、タクにされなければならないのだろうか?
少しムッとしながら「なんで?」問えば
「さぁな。ほら行くぞ」
タクはそれ以上は言わなかったから、私も追求はしなかった。
誰にでも触れられたくない事の、1つや2つあるだろう。
…コイツらにも
そして私にも。