乱華Ⅰ【完】


校舎にはもう人がいなくて、閑散とした廊下を3人で歩く。



そういえば結局修は来たんだろうか?とか正宗はあの後どこに行ったんだろうか?とか考えていて、ふと思った事を口にした。



「司もこの学校なの?」


「見たらわかんだろ」



振り返り問い掛けた私に、司はぶっきらぼうに呟く。



見たらわかんだろって言うけど、司は制服なんて着ていない。


ライトブルーの薄手のニットに黒のライダースを羽織った格好をしていて、どこからどう見ても制服を身に纏ってはいない。



「…制服着てない、よね?」



ポツリ呟いた私に、鋭い視線を向けた司はなんだか怒った様子で「ズボン!ズボン履いてんだろーがっ!!」言ってドスドスと廊下を踏み歩いて、行ってしまった。



「…あいつ制服、嫌いなんだとよ」



ポカンと司の後ろ姿を見ていた私に、タクがやれやれと言った感じで、言葉を投げかける。



…なんで私が聞き分けの悪い子供を叱る親の様な顔を、タクにされなければならないのだろうか?



少しムッとしながら「なんで?」問えば



「さぁな。ほら行くぞ」



タクはそれ以上は言わなかったから、私も追求はしなかった。


誰にでも触れられたくない事の、1つや2つあるだろう。



…コイツらにも



そして私にも。


< 60 / 294 >

この作品をシェア

pagetop