乱華Ⅰ【完】
「完全にタクの負けじゃねーかっ」
司がこちらを振り返らずに言えば、運転席から「ですね」と、同意の声。
タクはまだ少し赤い顔で「絶対ぇ犯す」とか言っていたけど、そんな顔で言われても全然恐くない。
そうこうしている内に、見覚えのある倉庫にやって来た。
昨日は気づかなかったけど、倉庫がある場所はいわゆる倉庫街ってやつで、昼間の今も辺りには人が殆どいなかった。
まだぼやくタクの後ろに着いて、2階への階段を登る。
カンカンと鉄製の独特な音が倉庫に響いて、その音につられてか、なんなのか、下にいた数人が頭を下げていた。
目をキラキラと輝かせた彼らを見て、そこには完璧な上下関係が出来上がっている事を如実に表していた。