乱華Ⅰ【完】
「お前携帯とかしねぇーな!」
どれくらいしてだろうか。
ドカリと向かいのソファーに腰を降ろしたのは、司。
司から声を掛けてくるのが、初めてな気がして、少し吃驚した。
「あー…うん、まぁ…」
「修が連れてる女とか、いつも携帯弄ってんぞ!」
「…そう、なんだ」
「お前、友達いねぇんだろ?」
ハンっと乾いた笑みを漏らして、隣に座ったのはタク。
その表情からは、先程の失態を挽回しようとしているのが見て取れた。
「いないよ」
マメに連絡を取り合う様な友達なんて、いない私はごく普通に答えたけど、その言葉で部屋は静寂に包まれた。
テーブルに置かれた、ジッポに彫られた文字を見ながら
「…何?」
不審に思って言葉を紡げば「…いや…」と言葉を濁したのは正宗。