乱華Ⅰ【完】
どうやら顔に出ていたらしい。
…と、いうより私はこの人たちに顔色を読まれすぎじゃないだろうか?と考えながら「言わないよ」と口にした。
「ゲンでよろしく」
助手席に座った正宗が、お馴染み龍が立派なお兄さんに告げる。
彼が「はい」と口にして車はゆっくりと発進しだした。
その時既に、修と司の姿はなかったわけだけど。
「…ゲンて何?」
「居酒屋。まぁ気兼ねなくできる場所だから安心してよ」
助手席から振り返る正宗は、ニコリと一スマイル。
…この笑顔は正宗の癖なのかも知れない。
「ふーん」と呟けば「本ッ当お前いい度胸してんな?」左に座るタクに嫌味たっぷり言われた。
「…何が?」
「まぁ見てればわかる」
ニヤリと笑ったタクはどうでもいいけど、正宗までもが口元を僅かに持ち上げているのが気になった。