乱華Ⅰ【完】
「安芸と城戸が何でこんな所にっ…」
アキ…?
キド……?
背後から聞こえる声は、焦りに満ちている様に感じる。
気付けばオレンジの後ろに、もう一人。
黒髪に金メッシュ。
…仲間じゃ、ないの?
どっちでもいいけど、私は早く逃げないと…
だけどぐらぐらする頭と今にも座り込みそうな身体は、もう走る事ができないと理解する。
私はただ目の前のオレンジを見ていて、後ろからは赤髪が何かを言っていたけど聞こえてなかった。
私の肩に手を置く目の前のオレンジは何故か口元に緩やかなカーブを浮かべている。
「…お前らこそなんでこんな所にいるんだよ?」
「……」
2人のやり取りの意味はわからない。
だけど、雰囲気は重い。
ビシビシとヤバい空気を感じる。
「…ここはウチの縄張りだろ」
その言葉を発した瞬間。
私の肩を黒髪の方に引っ張ったオレンジは、真横を通り過ぎて、赤髪に殴りかかっていた。
その速さは尋常じゃない。
鈍い音と、男の呻き声が聞こえる。
一気に殴られた赤髪は瞬殺されたのか、地面に突っ伏していた。