乱華Ⅰ【完】
「…で?」
食べ始め5分くらいして、不意に声を発したのは和真さん。
天ぷらを食べていた私は顔を上げて初めて気づく。
みんながもうご飯を食べ終わっていた事に。
…早いな。
みなさん食べるの早すぎやしませんかね?
もぐもぐもぐ口を動かしたまま和真さんを見れば彼は、颯人を見ていた。
それに倣って隣に座る颯人を見る。
颯人は悠長に煙草を吸っていて、その瞼は閉じられている。
ゆったりとした様子で煙を吐くと同時に、瞼を開けた颯人は低い声で一言。
「心」
私の名前を呼んだ。
「ふぇ?」
変な声が出たのは間違いなく、天ぷらを口にしていたからで、若干恥ずかしくなる。
「お前今日繁華街歩いて、どう思った?」
颯人に聞かれて考える…
どうって…
「…うるさかった」
「ブッ」
私が答えたと同時に、和真さんが思い切り吹き出した。
…何?