乱華Ⅰ【完】
「心ちゃんだっけ?」
「はい」
「颯人達はさ、聞いての通り乱華っつう暴走族なんだけどよ、まぁ有名なんだわ」
「はぁ…」
「繁華街通ったならわかるだろうけど、コイツらに容易く声掛ける奴なんてそうそういないわけ」
言われて思い出すのは、みんな遠巻きに見ていた事と、道がスッと開いた事。
確かにきゃあきゃあ言ってはいたものの、直接的に声をかけて来る人はいなかった。
「心ちゃんはそれをする唯一の女の子ってワケ。だからタクが恐いもん知らずなんて言うんだよ」
「…」
「普通は下心ありで声を掛けてくる。まぁ颯人達の外見だったり、地位だったりな?」
「それがない心ちゃんをコイツらなりに歓迎してんだよ」
カラン…
手から落ちて、無様にテーブルの上を転がるお箸。
………はぁ!?
「ちょっ…和真さん!?」
ガタンと音を立てて、立ち上がったのは正宗だった。