乱華Ⅰ【完】
暗くなった空に月が輝く。
やけに丸い月。
今日は満月…か。
ふうっと吐き出した息。
…疲れた。
「おい」
後ろから聞き覚えのある不機嫌な声。
振り返らずに「何」言葉を漏らす。
「テメー勝手に消えるな。俺が颯人に殺されるっつったろ!」
人目も憚(はばか)らずに怒鳴るタク。
繁華街を歩く人が遠目でチラチラとこちらを見てる。
知るか。
店から出ただけじゃんよ。
「おい、シカトか?」
「……。」
くるり、振り返れば真後ろに立つタクに見下ろされる形になった。
月明かりを浴びたオレンジが、昼間よりは落ち着いた雰囲気を出す。
「…帰りたい」
帰りたい。
返りたい。
…還りたい。