乱華Ⅰ【完】
「陽炎」
ゾクリ、背筋が凍った。
それは、正宗がシニカルな表情ですごく低い声を出したから。
眼鏡の奥が怒っていたから。
笑いながら怒る正宗に、寒気がした。
視線を窓の外に向けた所で、既に繁華街からは遠のいていたけれど。
「…かげ、ろう」
やっと絞り出た声はとても小さいものだった。
「いたんだよねぇ。十数人、陽炎の奴らが。あんな時間に」
ふっと笑ったかと思えば、鳴りだした携帯を耳に当て「吐かせろ」凄い事を口にした。
すぐに携帯を切った正宗に「愉しそうですね」龍のお兄さんが口を開いてチラリ、正宗を見た。
…愉しそう!?
えっ!?愉しそうな表情なの?コレが!?
シニカルな笑みを浮かべてはいるものの、目は笑ってないけど!?
後部座席から正宗を観察するように見ていると「当たり前だろ」と残酷な笑みを浮かべた。