乱華Ⅰ【完】
「アイツ、知らねぇのか?」
漆黒が私を探る。
射るような眼で私を探っている。
「知らない」
ジっと漆黒を見返して即答した。
してやった。
だって本当に知らない。
てゆーか…
「さっきの奴って陽炎の奴なんでしょ?だったら私の事知っててもおかしくないじゃん」
私は知らなくてもさ。
「………」
何?
口を噤んで私を見てる颯人。
私別におかしな事言ってなくない?
なんで沈黙になるわけ?
「いや、なーんかおかしいんだよな〜」
「ほら、心ちゃんも聞いたでしょ?意味不明な事言ってたの」
颯人の代わりに修と正宗が口を開く。
そして正宗の言葉にさっきの奴を思い出してみる。
確か…出せとか必要とか…言ってた、よね。
でもそれは…
「私が喧嘩売ったからじゃないの…?」
「いや、アイツこうも言ってたよ。“利用価値のある女”」
………利用価値?
利用、価値…それ、は…
私を人質に乱華脅すからじゃないの?
「なんでわざわざ俺達にそんな事言うんだよ!」
バシッ!
盛大にタクから頭を叩かれた。
「いてぇよ!」