女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
布団の中は二人の体温で温められている。それはとても安心する温度で、私はゆっくりと目を瞑った。
人に必要とされて一緒に眠ることが、こんなに嬉しいことだとは知らなかった。気付かずに生きてきた。
この人のお陰で・・・・・気付けたんだ。
彼の長い髪が顔にかかっているのを布団から手を出して額からどけたら、すっと、彼の目が開いた。
桑谷さんは何度かゆっくりと瞬きをして、掠れた低い声で言った。
「・・・・・眠れないのか?」
「・・・寝たわ。もう朝よ」
「何時?」
ベッドサイドに置いた携帯電話に手を伸ばして開き、時間を確認する。
「―――――4時20分」
「・・・・・・早いな」
私は手を伸ばして、はみ出た彼の裸の肩に布団をかけなおした。
「もうちょっと寝て下さい。私も、また眠るから」
ゆっくりと微笑んで、彼はまた目を閉じた。
私はそれをじっと見て、寝息が聞こえ始めてからも暫く待ってから、そっとベッドを抜け出した。