女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
徒歩一分のカフェでは、既に小林さんが待っていた。
立ち上がって迎えてくれる。緊張しているようで、小さな顔は強張っていた。
私はコーヒーだけを注文して小さなカフェテーブルを挟んで座った。
「お待たせしました」
微笑むと、いえ、来たばかりですので、と首を振る。だけど何も言い出さないので、私から口を開いた。
「30分しかないし、お話があるならどうぞ。斎のことだとは思うけど」
名前を出すと、小さな肩をぴくりと震わせた。
「・・・あの・・・小川さんは、以前に守口さんと付き合ってらっしゃったとか・・」
コーヒーが来て、私は礼を言って受け取り、早速一口飲む。こう眠くっちゃ、集中出来ないわ。
「そう」
「あの・・・もしかして、まだお付き合い・・・してるんでしょうか・・」
「は?」
思わず顔を上げたら、彼女は顔を赤くしてうつむいた。
「・・・そう噂を聞いて・・・」
うーん・・・・。あんなに険悪な雰囲気を醸し出しているのに、やっぱりその手の噂は流れるのね。ま、その方がみんなは面白いもんね。
私は少し大げさくらいに、顔の前で手をひらひらと振る。