女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
救急隊員がつくと家の鍵は開けっぱなしで意識を失った私しかいなかった為、私が目覚めてからの事情聴取となり、その頃には私は一切を秘密にしようと誓った後だったので、『ただ量を間違えてのみ、無駄に苦しんだバカな女』になったのだ。
目が覚めて、病院のベッドの上で、考えた。
警察に言う?親にも言う?そしてアイツを法に裁いてもらう?
するとどうなる?
まずは周りに同情される。だけど別にアイツは刑務所にいくほどのことをしたわけではないから、たくさんの人に話しを聞かれてその度に私は傷をえぐるハメになるんだろう。
悪い男にひっかかったのね、何てバカだったの、アナタ。そういわれるんだろう。同情の目をしながら口元を微笑ませた人たちに。私だって、他の誰かどうでもいい人の話だったらきっとそんな反応だ。
そして、斎はまたもとの生活に戻るんだろう。
女を真剣に愛したことはないんだ、とせせら笑っていた。女なんてただの道具にすぎないと。付き合いも最後の方になると、機嫌が悪い時の斎はよく本音を出していたのだな、と今なら判る。
だけど私は彼女なのだから、この人にとっても特別なはず、そう思い込んでいた過去の私を蹴り飛ばしたい。
天井をにらみつけた。
周りには、黙っていよう。家にも電話はしない。この入院はなかったことにしてみせる。
最低な男にひっかかった挙句に目の前で死のうとするなんて、私も最低だっただけだ。
こんなことは、人には言えない。