女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
汚い部屋を一日かけて掃除した。
壊れた心にはいいかと思って、ビョークのアルバムをリピートかけて掛けっぱなしにした。
あの歌声で、全部忘れられるかと思って。
斎が付けたタバコの焦げ跡も私が吐いた跡もあるカーペットはもう丸ごと棄てた。いらねー、いらねーよ、もう、全部。ソファーも。本棚も。おそろいのカップも歯ブラシも全部、それをみたらあの男が出てくるようなものは全て棄てた。
燃やしたいところだったけどそんなことは勿論出来ないから、普通の方法でゴミに出した。
まるで断舎利みたいに。部屋はすっからかんになった。
肩で息をしながら、物もほとんど残ってない部屋の真ん中に立っていた。あとの物は全部コンビニで貰ってきたダンボールに突っ込んだので、4年住んでる私の部屋は引っ越してきたばかりの部屋みたいになった。
そして、私は次の行動へうつる。ざんばら頭をひとつでくくってまとめて、現金がいくらのこってるのか確かめに、銀行に行ったのだ。
斎が私から奪ったお金は大金だったから、引き出しには印鑑と窓口が必要で、それは既に印字されているはずだ。だけど病院代はATMでおろしたので、まだ通帳には今現在の残高は書かれていない。
昨日はまだその数字を受け入れる勇気がなくて、通帳を開いていなかったのだった。
既に判っている結果ではあったけれど、やはりドキドキしていた。恐る恐る通帳をATMに突っ込む。
音がして機械から吐き出された通帳を震える手でゆっくりと見下ろした。
20××、0514 払い出し 2010000
「――――――――――」
目の前が、真っ暗になった。