女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 あの男にそんな貯金があるとは思えない。昨日の小林さんも言っていたけど、出会ってから春先までの豪勢なデートやプレゼントは自分のお金だったんだろうが、それが尽きたから、倒れた私の貯金に手を出すという罪を犯したのだろうし。

 メーカーの社員のボーナスか何かかな?6月にボーナスは出ている筈。いやいや、でも。お洒落好きで金遣いの荒い斎がそんなお金を残しているとは思えないし、メーカーの社員のボーナスがそんなに高いとも思えない。それにもしボーナスだったとしても私に全額渡すか?あの男が?

「ないない、そんなはずない」

 わざわざ声に出して自分で打ち消した。

 うううーん・・・。


 昨日は眠気もあって首を突っ込むのはやめようと思ったけど、元気になるとやはり気になるこのお金の出所。

 眉間に皺をよせて考え込むけど、いずれにせよダークでヘビーな犯罪しか思いつかなかった。

 ・・・やーめた。どうせいくら考えたって想像の域を出ないのだ。

 私は簡単にシャワーを浴びて、外出の用意をして家を出る。

 ハーフパンツにサンダル、Tシャツという簡単な格好だった。帽子を被って化粧もしない。

 行く先は、銀行とスーパー。食材を買い込んで休みの日にご飯を作り溜めしておき、小分けにして冷凍するのだ。

 弁当作りにも便利だし、経済的。疲れて帰ってきても解凍すればすぐに食べれるってわけ。

 太陽は、紛れもなく夏だった。



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