女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
翌日から、私はゆすり女からスパイもどきに変わった。
斎の行動は出来る限りつけた。百貨店にいる時間はそんなに悪さも出来ないだろうけど、その他の時間は違うはず。かと言って出勤日も違うし、勤務時間も違うので、プライベートを付回すのは難しい(そして、やりたくない。嫌だ、バカ野郎のあとつけんのなんて)。
そこで、百貨店にいる間、出来る限り近くにいて、電話や人との会話を盗み聞きしようと企んだのだ。
周りの目ざといパートのおば様達の目をごまかすのは至難の業だと判っていたので、逆に利用させて貰うことにした。
曰く、「ガリフの守口店長が浮気をしているのではないかと小林さんに疑われた。私ではないが、もし浮気をしているのであれば女として許せない。ぜひ、突き止めたい」大作戦。
あはははは、我ながら、何て姑息なナイスアイディア!
これでデパ地下の洋菓子売り場のパート販売員はほとんど協力してくれて、今日は守口さんは出勤だとか、さっき休憩室で誰々と居ただとかの情報を皆がくれた。
優しい小林部長の大事な娘さんの為と正義感を燃やす人もいれば、ただ単に面白いからと協力してくれる人もいる。
何でも良かった。手足となってくれる人は、多いにこしたことがない。百貨店のいたるところに目を作り、私はヤツを監視する。
1週間ほどのえせスパイ活動で判ったのは、斎の、百貨店側社員との交流の多さだった。
休憩はほとんど誰かと一緒にいたし、『深刻そうに額をつき合わせて話していた』ことも多いらしい。