女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
ぱっとした暗算で200万くらいはなくなっていると思ってはいた。でもまさか・・・。本当に、あのバカ野郎は200万も私から盗ったのだ。
しかも、あと1万円プラスして。
「・・・」
ATMの列から離れて、私は胸を押さえながらヨロヨロと歩く。
銀行の真ん中で絶叫しそうになった。
しがない派遣生活で、節約に節約して溜めた200万である。
口座の残高は13万8000円。
30歳、独身一人暮らしの無職、現金13万8000円。
月末に落ちる家賃で半分に減るほどの残高を見ていたら、目が回りだした。
痛い社会勉強だったと思って、放っておこうと思っていた。
私がバカだったのだと諦めようと思っていた。
部屋の鍵だけかえて、新しく人生をやり直すつもりだった。
すっぱりと忘れて。思い出す価値もないからと。銀行の後は、職探しをしようと思っていた。
それが、30まで生き抜いてきた社会人の行動だと思っていた。