女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
私が見ていると、動いたせいか彼も目を覚ました。
うううーん・・・と絡まった手足を解いて、眠い目をこすっている。
「おはようございます。手足、痺れてませんか?」
うっすらと瞳を開けた男に聞くと、寝起きの掠れた声で、大丈夫、と返ってきた。
壁の時計を仰ぎ見ると、朝の9時過ぎだった。枕元のリモコンでクーラーを入れる。こんなに暑い部屋で、人肌の熱さも気にせずによくも長い間寝れたもんだと感心した。
「ちゃんと、寝た?」
隣で大きく伸びをした桑谷さんが聞いてくる。
「はい、今回はちゃんと。ところで桑谷さん」
「ん?」
「今、おいくつですか?」
暑い、とタオルケットを跳ね除けて、仰向けからうつ伏せになった桑谷さんが、目を閉じたまま答えた。
「33。・・・君は?」
「30です」
へえー、3つ上だったんだ。落ち着いた物腰や言動で勝手に年上だろうと判断していたけど、33歳。そりゃあ男としていい時期だよね。
掛けていたタオルケットをどかされたので全裸のまま横たわる私を、長いこと見詰めて彼が微笑んだ。
「・・・・裸のべっぴんさんが、隣で寝てる・・・」