女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


「失礼します」

 行儀のよい声をかけて前に座る。彼女は茶色の長くて綺麗な髪を後ろでまとめてあげていた。

 私は思わずお箸をとめて、彼女をじいっと観察してしまう。・・・・ほんと、見た通りにいいとこのお嬢さんって感じ。人形みたいだわ。

「その後、どお?守口さんは態度戻った?」

 彼女の前ではもう斎と呼ばないことに決めた。人柄が判って、かく乱する必要がなくなったからだ。

 小林さんはお箸を止めて、曖昧に微笑んだ。

「・・・そうですね。前のように優しくなったと思います。でも繁忙期だし、ほとんど会えてないんですが」

 ふーん?私はちょっと考える。金作りに奔走するのが落ち着いたのかな?私まだ全額返してもらってないけど。ま、とりあえず、彼女は前よりは元気そうだった。

「そう、辛くあたられてないなら良かったわ」

「私からも・・・距離を取ってますので」

 彼女は私と目を合わさずに、俯いて小さな声で言った。

「小川さんとの事も考えましたし、熱が、ちょっと冷めたというか。冷静に彼のことを見ると、確かに、なんというか・・・」

 言葉が続かないようで、更に小さくなって消えていった。

「・・・ご飯、冷めるわよ。食べて食べて」

 はい、と返事をしたから、私もお弁当を再開した。


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