女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「・・・そしたら同期があの二人はうまく行ってないのかと血相を変えたから、何ごとだ、と聞いたらそんな話が出た。うまい話だったら俺も噛みたいと言ったら仕方ないな~って全部話したよ」
私はテーブルを挟んでマジマジと桑谷さんを見詰める。
「すごーい・・・まさか、そんな上手に聞き出すなんて」
「いや、大したことしてねえよ」
少し照れたように肩をすくめて言い訳していた。同期が絡んでたから早かっただけで、云々。
「・・・・でも、それってどうしたらいいんだろう。やっぱり出所が判ってしまうと・・・お金、返したほうがいいですかね」
私の悩むところはそこだ。
斎が金融機関で借金して勝手に一人で苦しむのは諸手を挙げて大歓迎だが、その他の善良な人々の懐をくすねたいわけではない。
私が返して貰った総額80万は、どうやら百貨店の社員さん達の懐から出たらしいと判ったからだ。それって、かーなり良心が痛むんですけど・・・。
すると桑谷さんはぴらぴらと片手を振った。
「貰っとけ貰っとけ。あいつらだって、欲の皮が突っ張ってんだから。この世の中美味しいだけの話なんてないんだって勉強するべきだよ」
・・・・ええ、私も痛い社会勉強でした。私は額に片手を当てて悩む。
「うーん、でも」
「いいって。君とは違ってあいつらは自分で納得して支払ったんだ。それが詐欺でしたー、なんて、ほんとバカだと思うよ。少なくとも俺はひっかからないと思うような話だしな」
・・・まあ、それは判る。