女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
包装をする手を休めずに女性客の話に相槌をうつ斎を見ていたら、笑いがこみ上げてきた。
・・・やばい、私もかなりキてる女だわ。ここでヒステリックに爆笑なんてしたら、仕事を失うハメになるってーの。自分に、落ち着け、と言い聞かせる。
斎から無理やり目を離して、自分の売り場に入って行った。
とにかく、どうにかして桑谷さんに連絡を取らなきゃ―――――。
私物鞄を直して立ち上がり、自分の売り場の順番待ちをしているらしいお客様に声をかける。
「お待たせいたしました。お伺いしておりますか?」
接客用の顔で微笑んだ。
2回目の休憩の時、トイレの中で桑谷さんにメールを打った。
「こんにちは、今日はお休みですか?
今日、小林部長の娘さんから、守口さんからプロポーズをされたけど断ったと聞きました。
今晩、帰宅したら電話してもいいですか?」
送信っと・・・。メールの絵が画面の中を飛んで行ったのを確認して、送信履歴から今のメールを消す。
桑谷さんにメールを送るときにはトイレに入るようにしていたし、送受信の記録はマメに消していた。いつ携帯を落とすことがあるかもしれない。
既に十分危ない橋は渡っているのだ。用心に越したことはないだろう。