女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
販売員なら、結構のっているはず。斎と付き合っているうちに知った情報を総動員すると、夏の中元の時期の繁忙期まえで、百貨店の販売員の求人は増えているはずだ。
去年の夏や冬の繁忙期には、それを理由に斎はまったく私の部屋に来なかった。
「お前なんかに構ってる暇ねーんだよ」って言ってた、確か。
全く、一々ムカつく男だ。その時の私がヤツの吐いた言葉に傷付いて黙り込んだのが間違いだったのだ。殴ってやればよかった。
怒りに任せて丁寧とは言えない手つきでガサガサと広告をめくる。隅から隅まで見渡せば、欲しかった求人を3つほど発見した。
しかも、その内一つは斎と同じ百貨店の洋菓子売り場だ。販売員は今まで経験がないが、出来るか出来ないかなんて言ってる場合じゃない。
やらなければ。
とにかくあのバカ野郎に復讐をするまでは、家賃と食費だけ払える給料があればいい。節約は殆ど趣味の領域に入っているし、今度は金のかかる男もいない。晴れてこの気持ちから自由になった後、また正社員を探すのだ。
バイトでいいの、バイトで。
派遣に比べたら時給は安いが、そこらへんのコンビニでバイトをすることを考えたらまだいい時給だと思うし。ざっと計算して、月に10万ほどか。
即行動!と声をあげて、ケータイを取り上げた。広告を見ながらボタンを押し捲り、老舗のチョコレート屋本社に電話を入れる。