女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 さっきまで考えてたことが原因であるに違いない、と思った。まさか・・・まさか・・・このシチュエーションを私が喜んでるなんてことは・・。

 一瞬混乱して私は変な顔をしていたはずだ。

 改札口が近づいてきて、彼が聞いた。

「・・・送って行こうか?それともどこかでご飯食べる?」

 ・・・お腹、さっきまで空いてたけど、今はもう判らない・・・。

「帰ります」

 私が小さくそう言ったら、了解、と返事が聞こえた。

 手を繋ぐには熱い気温だった。だけど、この手を外したくない、と思った。


 電車の中では流石に繋いではいなかったけど、遠慮がちに手は触れ合っていた。それを意識してしまって彼の顔を見れない。

 公衆の面前で話すこともなくて、窓の外を過ぎていく夏の夕方を見ていた。

「・・・メール、返さなくてごめん」

 ぼそりと彼が言った。私は隣に立つ桑谷さんの顔を見上げる。

「いえ。忙しかったですか?」

「・・・寝てた。昼過ぎまで寝てて、そのあと買い物やらなんやらしてたらあの時間になったから、もうメールするより会いに行こうと思って」

 ははあ!寝ていたのか。私は納得して頷いた。


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