女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
荒い息の中繰り返した口づけで、私は眩暈が酷かった。くらくらと回る世界の中で、全世界は溶けて流れ出していた。
こんな底抜けの快楽をくれた男は初めてだった。
こんなに激しく求めてくれた男も初めてだった。
我を忘れて反応した自分に驚いていた。
そして、この人から離れるつもりがないことを悟った。
―――――――――恋というのは、落ちるものだったんだって、今本当に理解した。
「・・・桑た・・・・―――――彰人、さん・・・」
私を見詰めていた彼の目が、一瞬大きく開かれた。
初めて彼の名前を呼んで、汗だくの体を抱きしめ、私は言った。
「・・・・恋、しちゃったみたい・・・あなたに」
まだ体が繋がったままだった。それにほとんど全裸で玄関の扉に背中を押し付けられたままでの告白に、唖然とした後、本当に嬉しそうに、彼が笑った。
初めは口の中で、それから声に出して、あはははと笑う。
抱え上げた私の腰に回した手に力を入れて、ゆっくりゆっくりと柔らかく唇を押し当てるキスをする。
潤んだ視界の中、彼が真っ直ぐに私を見詰めていた。
「・・・じゃあこれは恋人のキスだな」