女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
漫画みたいに目が点になった。
何ですと?思わずそんなふざけた口調で聞き返しそうになって、職場であるのを思い出して口を噤む。斎はふと思い出すような顔をして、ショーケースに視線を固定して言う。
「・・・そういえば、前に倉庫で桑谷さんにご飯誘われてたよな。二人はあれから付き合ってるのか?」
無言のままで、私は目を細めた。桑谷さんとは気をつけていた。百貨店ではほとんど接点はなかったはずだし、噂に立つようなことはしてない。
どうしてあんたが知っているの。心の中で呟く。
「―――――――何が言いたいの?」
ニコニコと気軽な雰囲気なまま、斎は肩をすくめた。
「聞いているだけだろ?彼氏が出来たなら、良いことだよな。おめでとう」
「・・・そちらは、いつ結婚するの?小林部長の娘さんと」
私は否定も肯定もせずに質問で返した。
一瞬、斎の目元がぴくついたのを見逃さなかった。
「・・・何で結婚なんだ?付き合ってまだ一年も経ってないんだぜ」
目元は無表情のままだったけれど、思わず皮肉な笑みを口元に浮かべて私は言う。
「浮気期間を含めたら、もう少しで一年じゃないの。それに・・・もう今年で32歳でしょ?身を固めてもいいと思うけど。妻帯すれば、あんたの浮気癖もバカな行動も収まるかもよ」
斎はまじまじと私を見て言った。
「・・・お前、そんなにキツイ女だった?」
「ええ、そうだったの」