女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 さっきまでは確かにお腹が空いてなかったのだけれど、悩み事が解消した上で目の前に置かれると、やたらと空腹を感じた。

 私は嬉しくお箸を取り、頂きます、と手を合わせて食べ始めた。斎は少しボーっとしていたようだけど、私の視線に気付いて箸を取った。

 二人で黙ってラーメンを食べる。

 不思議な感じだった。

 もう別に話す事はなくて、懐かしい店で久しぶりのラーメンを並んで食べていた。

「美味かったよ、ご馳走様~」

 斎が綺麗な笑顔を浮かべておばさんとおじさんにそういう。汗も引いてお腹も満たされて、幸福な気持ちで私も席を立った。

 また来てね、と手を振るおばさんに曖昧に微笑んで店を出る。

 もう斎とここに来ることはないハズだ。私はこの街から引っ越すと決めたし。

 そんな事はわざわざ言わないけど。


「・・・流石に日も落ちたな」

 斎が空を見上げて言った。

 いくら夏と言っても7時半過ぎ、既に辺りは暗くなっていた。

「そうね」

 私は斎を振り返る。

「それじゃあ、ここで。銀行どうぞ宜しくね」

 ここからは道路を渡って神社を通りぬけたらすぐに私のアパートだ。


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