女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
暗闇の対決。
斎の、ねっとりとした声が闇の向こうから飛んできた。
「―――――・・・さっきのは、今までのことに関してだろ。今のごめんは、これからのことだよ」
「これから?」
意味が判らずに、私は体を斎に向けた。
その時、ザワッと背中が総毛立つのを感じた。突然のことだった。いきなり巨大な不安が襲ってきて、私の体は震える。
私は思わず一歩下がる。
・・・なんだろう、この感じ。マトモに立ってられない、この感覚は・・・。
斎はそんな私には気付かず、なにやら鞄をごそごそしている。
「そうだ、まり。これも、やっぱり渡しとくよ。ってどこ行った?」
そう言いながら斎は鞄をかき回している。
突然の不安感に訳が判らずに、私はイライラと言った。
「もう、何してんの?準備悪いわね・・・」
イライラして責める口調になった私に、そう怒るなよ、って斎が苦笑した。
「あ、あったあった」
そう声に喜色を滲ませて、斎が鞄から細長いものを掴みだした。そしてそのまま手を放して鞄を地面に落とす。
ヤツを見て、私はとっさに後ろに飛びのいた。
街灯が二つしかない小さな神社の境内に、キラリと白刃が光った。