女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
その場の気配が変わった。
直角三角形の頂点の位置で3人が立って、お互いに監視しあっていた。
「なあ、5月に一緒に飲んだじゃねーかよ。まさか忘れたわけじゃあねーだろ、桑谷」
斎のあざけるような言い方が耳に残る。
―――――――5月。・・・5月は・・・斎と喧嘩し、入院し、百貨店に入った。百貨店のパーティーは6月だったから、私はまだ桑谷さんとは知り合って、ない・・・。
そんな時期に桑谷さんは斎と飲んでいた?
二人は知り合いで酒を飲む仲だった?
私の眉間に皺がよる。斎と桑谷さんを交互に見詰めながら、頭の中は混乱していた。
「俺のことはまりに話したのか?いい関係になったんだろ、そこのくそビッチと?」
視界の端で、息を止めたかのように桑谷さんの肩がぴくりと震えたのを見た。
「・・・全部お前の計画通りになったのかよ、ああ?」
私は斎から目を離さずナイフも構えていたけれど、耳の奥では鼓動が激しく鳴り響いていた。
―――――――――計画通り?・・・桑谷さんが、何・・・?
桑谷さんは黙って斎を見るばかりで、反論も同意もしない。
ざらざらした声で、なおも斎のあざけりは続いている。
「その女の味はどうだった?ベッドでも、お前に騙されたのか?そいつは中々いい顔をして鳴くだろう、お前にはどんな顔を見せたんだ?」