女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
第7章 結末。
追いかける男、逃げる女。
今日は遅番で勤務日だった。
明け方からうつらうつらと少し寝て、太陽が高く上がった午前10時頃、暑さに耐え切れなくなって、布団から手だけを伸ばし、リモコンのスイッチを入れてクーラーを始動させた。
・・・そろそろ起きなきゃ、仕事に間にあわない・・・。
ぼんやりと起き上がって、顔の前にかかる髪をかきあげる。
カーテンを閉めていない窓の外には夏の空。入道雲が地平線の近くに湧き上がって、青と白の見事なコントラストを作っていた。
それをぼーっと見詰めながら、ぐるぐると回っていた昨日の記憶がまた蘇るのを止めることも出来ずにまた流される。
「ナイフを離してください」
何回か警官に言われて、やっと自分が斎のナイフを握り締めたままだったのに気がついた。
「・・・あ」
手放そうとするも、真夏の夜なのに冷え切ってしまっている私の指はいう事を聞かない。見かねた警官が手伝ってくれて指を一本一本はがし、やっとナイフは地面に落ちた。
そのまま地面にへたり込む。
私の頭は停止したままで、何かを警官が聞いているのにも満足に答えられなかった。
パトカーに連れて行かれて乗せてもらい、渡された缶コーヒーを飲む。
それでやっと、現実が私に戻ってきた。
「・・・大丈夫ですか?何があったんですか?」