女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
頭を下げて挨拶をしてから、百貨店を出て足取りも軽く駅へ向かう。
コンビニで、安さで有名な通販の雑誌を手に入れ、ついでにお弁当、缶ビールを買った。
これからは自分の趣味で部屋を作るのだ。
あの男の言いなりではなく。
そして明日からの仕事に慣れるまでは大変だろうし、捨てまくった家具を買いに行く時間もないから、通販で揃えようと決めた。今夜は弁当を食べてビールで乾杯して、それから自分の部屋の改造計画を楽しく立てよう。来月から入ることになった給料の存在が私を明るくしていた。
そしたら・・・・斎のことも考えずに済むだろう。
あの極上に綺麗で格好の良い悪魔のことを。
受けた心の傷も。
これからの厳しい毎日のことも。
自分の年齢と親からの過度の期待のことも。
私があいつと一緒にいた時間においてきたものを思い出すんだ。
あいつに出会う前の27歳の頃の自分に戻るんだ。
あの平凡な幸せを、もう一度この手にいれてみせる。
5月の風に吹かれながら、私は細かく武者震いをした。横断歩道で目をきつく閉じる。
あいつへの復讐を遂げる時、それまでは私は二度と泣かない。
絶対に、泣くもんか。