女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
私はドアを閉めて、部屋の中を見回す。
今日聞いた色々な事実が頭の中を駆け巡って行った。
睡眠薬を飲んだ夜。
一人で戦って緊張した夜。
昨日の夜と斎の笑い声。
そして今日の桑谷さん。
斎を疑っていた小林部長、その後輩だった桑谷さんの正体。
警備会社と調査会社。
彼は、私と斎をずっと見張っていた。
「・・・思いも寄らぬことって、世の中結構あるものなのね」
私は窓辺によって、駅の方角をじっと見詰める。
右手を見た。この手で殴った、彼の顔を思い出した。
そして貰った言葉を。
君が欲しいと言った、あのハッキリとした声を。
「・・・・ここに長く居すぎたみたい・・・」
呟いた声は、一人きりの部屋に吸い込まれて消えていった。