女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
第2章 潜入。

悪魔に微笑む。



 自分の趣味で選んでいたからと捨てなかったカーテンの隙間から、朝日が差し込んで瞼を刺した。

 床に直に敷いた布団の中でううーんと伸びをする。・・・体が痛い。マットレスも敷かずに薄い布団だけだと、大して脂肪のついていない体にはキツイものがあった。

「入院できっと筋力も落ちてるのよね・・・」

 思い出す度にむかつく。眉間に皺を寄せた状態で布団から起き上がった。

 昨日丹念に見た通販雑誌で既に新しい布団セットに〇をつけてある。

 この布団であのバカ野郎に何度も抱かれた。それでもこれを捨てたら流石に眠れないからと仕方なく使用しているのだ。ベランダで親の敵並にぼこぼこ叩きまくって埃を出したけれど、一度抱いた嫌悪感はなかなか抜けてくれなかった。

 斎の匂いが染みこんでいる気がする・・・。

 いやいや、と一人で頭をぶんぶん振りまくる。そんなこと、ないない。ねーんだったらよ!

 簡単な朝食を取り、シャワーを浴びて、化粧をする。鏡の中の私は顔色もよく、ほんの2日前に自殺未遂から退院したばかりの女とは思えなかった。

「・・・とりあえず、超悲惨な女には見えないわよね」

 呟いて、全身を確認する。

 制服を貰うまでは白シャツに黒いエプロンと聞いているから、ダンボールの中からシャツとズボンを引っ張り出した。シャツにだけざっとアイロンをあてて皺を伸ばす。

 茶色の髪の毛はアップにする。どうぜ三角巾で隠れてしまうのだろうし、丁寧にまとめる必要はないかと思ったが、斎に会うかもしれないし、電車にも乗るのだからと綺麗にまとめた。


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