女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「私、コピーライターの卵ですなんて言ってこの仕事を貰いました。すみません。どうしても百貨店に入りたかったんです」
私は背筋を真っ直ぐに伸ばして、面接を受けているかのように緊張をしながら言った。
この人を騙していたことは事実なのだ。それは謝罪しなければならない。福田店長はそんなことはもういいの、と手を振る。それから眉を悲しげに寄せて言った。
「保険がついたのは本当に良かったのね・・・。でも、それだったらここの給料だけでは、本当は生活出来ないのね?」
私はにっこりと笑った。
「贅沢も貯金も出来ません。でも生きていけますから。仕返しは終了しました。だから家賃ももう少し安い所に引っ越すんです。私、ここで働かせて貰ってもいいでしょうか」
福田店長が晴れやかな笑顔を見せる。
目的が他にあったとは思えないほど、あなたはここでは真面目に頑張ってくれたじゃないの、と彼女は笑った。こちらからもお願いいたします、と。
嬉しかった。
微かに潤んだ目で頭を下げた。
店長はもうちょっと時給を上げて貰えないかだけでも営業にかけあってみる、とまで言ってくれたのだ。私は胸が温かくなり、ふざけて、お鞄お持ちします!と抱きつきに行ったりした。
売り場に戻って、竹中さんにお礼を言う。そして、いつも以上に頑張って早番の仕事を終えた。
帰りに、福田店長に、迷惑ついでにとお願いを一つすることにした。
「明日からの私の3連休、誰かが何を聞きにきても、教えないで下さいます?小川は休みです、で通して頂きたいんです。いつまで、とかも言わずに」