女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
福田店長はじっと私を見て、悪戯っ子そうな瞳を見せて頷く。まだ私が聞いてないことがあるのね、でも了解です、任せといて!と請け負ってくれた。
私はありがとうございます!と90度のお礼をする。
「では、また3日後に。お疲れ様でした」
笑顔で挨拶をして店を後にした。
足を速めてロッカールームに駆け込む。今日は帰ってやらなきゃならないことがある。
福田店長に言ったことを実行すると決めたのだ。
今の部屋から、今晩出て行くのだから。
実は、今日のお昼の休憩時間中に引越しの手配を済ませていた。
業者さんと外であって、部屋の鍵を渡しておいたのだ。
斎と別れてから少しずつ探していた新しい部屋は、桑谷さんと話した、あの事件の翌日の夜、家に帰ってから電話で契約を済ませたのだ。
前に見ていたあの部屋で決めます、契約をお願いします、と。
不動産も24時間営業で、その便利さにびっくりしたけど助かった。
早番で上がった今日、帰りに不動産屋へ直行して、正式に契約を交わしてきた。
作ってあった荷物は今日の仕事中に新しい部屋へ運んで貰ってるから、何と私は今晩から新しい部屋に住めるのだ。凄いスピードで全てのことがつつがなく終了し、私はその手際の良さを自分で褒め称えた。
昨日彼を部屋に入れなかったのは、既に荷造りを始めていた部屋を見られたくなかったのが、本当の理由だ。
桑谷さんには黙って引っ越すつもりだった。